次亜塩素酸水の噴霧は危険&新型コロナウイルスを不活化しない by NITE(製品評価技術基盤機構)

次亜塩素酸水の噴霧は危険&新型コロナウイルスを不活化しない by NITE(製品評価技術基盤機構)

コロナ禍において、消毒液が入手できなかった頃から特に注目を集めた次亜塩素酸水。
オゾン水同様、コロナが原因で注目され、また次亜塩素酸水とオゾン水が比較される場面もしばしば見かけます。
そんななか、5月29日にNITE(製品評価技術基盤機構)が「次亜塩素酸水の噴霧は危険」「新型コロナウイルスを不活化しない」と発表しました。
信頼性が高い情報をもとに事実を詳しくみていきましょう。

NITE(製品評価技術基盤機構)とは

NITE(製品評価技術基盤機構)とは
正式名称は「独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation)」です。
NITE(ナイト)は、経済産業省所管の独立行政法人であり、行政執行法人であるため、役職員は国家公務員です。
常勤職員数は約400名程度であり、東京、大阪、かずさ(千葉県木更津市)にある本部以外に全国に支所があります。

今回の発表は、NITEが主体となった「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会」によるものです。
この委員会は、厚生労働省や経済産業省をオブザーバーとし、国立研究所や大学の学識経験者、関係団体などで構成されており、権威性は非常に高い団体と言えます。

NITEはどんなことをしている機関?

NITEは主に5つの分野があります。

  • 国際技術評価本部
  • バイオテクノロジー分野
  • 化学物質管理分野
  • 適合性認定分野
  • 製品安全分野

各分野で専門領域の「検査」「分析」「評価」などを行い、それらの情報を公開し、技術開発や安全性に貢献しています。
※国民生活センターなどとは異なり、かなり専門性が高い領域の調査を行っています。

当サイトでも過去に公開した記事内において、NITEの製品安全分野に触れています。
【事故事例/徹底調査】オゾン発生器・空気清浄機・加湿器の過去の事故事例を調べてみた 保護中: 【事故事例/徹底調査】オゾン発生器・空気清浄機・加湿器の過去の事故事例を調べてみた

NITE(製品評価技術基盤機構)の発表内容

NITE(製品評価技術基盤機構)の発表内容
NITE(製品評価技術基盤機構)は、新型コロナウイルスへの消毒目的として利用されている「次亜塩素酸水」について、現時点において「新型コロナウイルスへの有効性は判断できない」との中間結果を公表した。特に、噴霧での利用は安全性が確認されていないと注意喚起している。

残念なことではありますが、特に新型コロナウイルスに限っていえば「効果(有効性)がないうえに、安全性が確認されていない」ため、次亜塩素酸水を使用することはまさに百害あって一利なしという発表内容です。

次亜塩素酸水の酷すぎる販売実態

今回、NITEがこの発表を行った背景には、「次亜塩素酸水」の酷すぎる販売実態があるからです。
簡単に言ってしまうと、「次亜塩素酸水とは名ばかりで、ただの水」あるいは「一定の効果は見込めるが、人やペットにとって有害性がある可能性が高い」このような「次亜塩素酸水」が多く販売されています。

NITEの資料『「次亜塩素酸水」等の販売実態について(ファクトシート) 』によれば、主に下記4点について問題がある「次亜塩素酸水」が多数販売されているとのこと。

  • 「次亜塩素酸水」等の科学的特性から必要な表示内容がめちゃくちゃ
  • 有効性や安全性の根拠が何もない
  • 安全上の注意事項に関する表示がない
  • その他、自主的かつ合理的な選択を妨げ、あるいは法令違反のおそれがあるものが多数

「こ、これは、アカンやつや…」という声が聞こえてきそうな調査内容です。
「どこがどのようにNGなのか」というレベルではなく、もはや「ツッコミどころしかない」というのが現状です。
下記にその一例を示します。

「次亜塩素酸水」等の販売実態について(ファクトシート)

出典:「次亜塩素酸水」等の販売実態について(ファクトシート)

上記画像内で指摘を受けている内容は次のとおりです。

  • 遮光性のないボトルに入れられている
  • 99.9%の根拠となる有効性試験結果が記載されていない
  • 「10倍希釈」の意味が不明(原料を10倍に希釈した製品?)
  • ベビー用品に使える根拠となる安全性試験結果が記載されていない
  • 製造日が記載されていない。消費期限(製造日より2年間)の設定理由が不明
  • 製品の濃度(ppm)が記載されていない
  • 噴霧に伴う安全上の注意事項(次亜塩素酸ナトリウムとの混同注意等)が記載されていない
  • 手指への使用を謳っている【薬機法違反の可能性】
  • インフルエンザ対策を謳っている【薬機法違反の可能性】
  • 原料・製法が記載されていない(単に「次亜塩素酸水」と表示されている)
  • 酸性度がpHで表記されていない(「弱酸性」とのみ記載されている)

「ツッコミどころしかない」というのは決して誇張ではないことがお分かりいただけたと思います。
Amazon、楽天、ヤフーショッピングなどを中心に、そのような商品で溢れかえっているのが現状です。
緊急性が高くなり、殺菌や消毒の需要が一気に拡大し、そのどさくさに紛れて消費者を騙すこの行為は実に許しがたいものです。

新型コロナウイルスに対する次亜塩素酸水の有効性検証はこれから

次亜塩素酸水の需要は、2020年の2月中旬頃から急激に拡大しました。
そして、アルコール(エタノール)消毒液や除菌シートが手に入らないなかで、次亜塩素酸水を販売する業者も雨後の筍のごとく次から次へと現れました。

3月に入り、「新型コロナウイルスに対する次亜塩素酸水の有効性検証はまだまだこれから。次亜塩素酸水が新型コロナウイルスを不活化するエビデンスはまだどこにもない」と言われていましたが、あまりにも現状が酷いため、当初の予定を早め、NITEがその「有効性検証」をし、「効果が認められないどころか、室内空間に噴霧するのは危険な行為だから今すぐに止めるべき」と発表するに至りました。

ちなみに、次亜塩素酸水ではなく次亜塩素酸ナトリウムの方は新型コロナウイルスに有効性の検証は未だ行われていませんが、新型コロナウイルスに効果がないと考えている専門家はまずいません。次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム。名称は似ていますが両者はまったくの別物なのです。
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違いについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧下さい。
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違いを教えてください 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違いを教えてください

最後にまとめます。

今回の発表は、経済産業省所管の独立行政法人であるNITEが主体となった「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会」によるものであり、当該委員会は厚生労働省や経済産業省をオブザーバーとし、国立研究所や大学の学識経験者、関係団体などで構成されており、権威性は非常に高い団体でです。
そのNITEが「次亜塩素酸水は新型コロナウイルスを不活化しないし、そもそも有人環境(ペット含む)に噴霧して使用するのは危険な行為だからやめるべき」と発表(というか注意喚起ですね)を行った、という話しでした。

みなさんも巷で販売される「次亜塩素酸水」や効果が証明されていない殺菌消毒剤にはくれぐれもご注意下さい。

<参考URL>
厚生労働省「次亜塩素酸水」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf
経済産業省「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート)
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-3.pdf
「次亜塩素酸水」等の販売実態について(ファクトシート)
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-2.pdf
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)
https://www.nite.go.jp/index.html

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