コロナ禍は人類史上最大級の危機です。しかし、危機はいつも発明の切っ掛けになってきました。
コロナ禍でも、mRNAというまったく新しいタイプのワクチンや、テレワークという効率的な働き方が誕生しました。
その一方で「何これ?」と思わずにはいられない製品も登場しています。
コロナ・ニュースは暗いものばかりなので、この記事では、クスッと笑える珍品やアイデア製品を紹介しようと思います。
もちろん、ここで紹介するモノはすべて真面目につくられたものばかり。だからこそ(失礼ながら)笑みがこぼれてしまいます。
もくじ
鼻だけマスク

鼻だけマスク
普通のマスクは口と鼻を覆うので、着けたまま食事をすることができません。そこで、鼻だけを覆うマスクをつくったそうです(*1-1、1-2)。
ただWHO(世界保健機関)は鼻と口とあごを覆うマスクを推奨しています。それは、コロナが鼻と口から入ってくるからです。
しかし、鼻だけマスクの開発者もそのことは承知していて、食事以外のときは普通のマスクを着けるよう呼びかけています。
そうだとしても、鼻だけマスクはおかしさがこみあげてきます。
*1-1:https://twitter.com/ReutersJapan/status/1375077508329041920
*1-2:https://www.news24.jp/articles/2021/03/25/10845662.html
吊り革をつかみたくない人へ
兵庫県のDISCという会社が開発したのが、電車やバスの吊り革にまきつけて握る革製品です(*2-1、2-2、2-3)。

吊り革をつかみたくない人へ
製品名は神戸レザーハンドといいます。
8の字の形になっていて、吊り革の輪にこれをとおしてから握ることで、吊り革に触れることなく吊り革に体重を預けることができます。
吊り革に付着したコロナを手につけずに済みます。
販売元は至極真面目に感染症対策製品をつくっている会社なので、神戸レザーハンドを珍商品として紹介されることは本意ではないかもしれません。
しかしこの製品のコロナ対策効果はそれほど高くないと思います。
*2-1:https://www.rakuten.co.jp/auc-disc24market/info.html
*2-2:https://maidonanews.jp/article/13674181
*2-3:https://item.rakuten.co.jp/auc-disc24market/fishinghookdarkbrown/
感染対策は「?」がつきそう
吊り革にどれくらいコロナが付着して、その感染リスクがどの程度で、神戸レザーハンドを使うとどれくらいリスクを低減できるか、といった実験は行なっていない模様です。
また、常識的に考えて、吊り革に付着したコロナが神戸レザーハンドに付着して、それが持ち主の手について、その手で目や鼻をこすって感染してしまうというルートが想定されるので、感染をシャットアウトする効果は低そうです。
電車を降りるたびに神戸レザーハンドを消毒すれば感染リスクは減りますが、それなら吊り革を握った手を消毒すればよい、と考えることができます。
そして何より、電車やバスの車内では、「吊り革→人の手」という感染ルートもさることながら、人々の会話による飛沫や、換気不足、混雑のほうがリスキーといえます。
国土交通省は、鉄道利用者の注意点として、マスク着用や会話を控えること、車内換気などを挙げていますが、吊り革への接触は挙げていません(*2-4)。
それでも神戸レザーハンドをここで紹介したのは、このような製品を使ってコロナを警戒しよう、という気持ちが大切だと思ったからです。
また潔癖症の人には、コロナに関係なく安心感を与えてくれる製品といえそうです。
*2-4:https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000062.html
大学病院が真剣に開発も、見た目と発想がユニーク
神戸大学医学部附属病院と、青森県弘前市の医療機器メーカー、マトリクス株式会社が開発した、首かけ型の空気清浄機を紹介します。名称は、アクティブマスクといいます(*3-1)。
大学病院が「コロナ感染対策」と銘打って、医療従事者向けにつくったわけですが、見た目と発想がユニークなのでここで紹介します。

アクティブマスク
アクティブマスクは、1)空気清浄機のタンクと、2)キレイな空気を顔の前に吹き出す棒と、3)その棒を固定する首かけ器具で構成されます。
利用者は、通常のマスクをしたうえで、アクティブマスクの棒を顔の前に立てます。
アクティブマスクの電源をオンにすると、コロナなどのウイルスをつかまえることができる空気清浄機が、空間の空気を吸い取って浄化します。
浄化された空気はホースを通って棒に流れ、棒に空いた穴から吹き出てきます。
これにより、顔の正面にキレイな空気のエアカーテンができるので、利用者は、空間に浮遊するウイルスや患者さんが飛ばした飛沫を吸わないで済みます。
あえてのツッコミ
アクティブマスクの携帯型エアカーテンという発想はとてもユニークですが、あえて「ツッコミ」を入れさせてもらうと、顔の前に立つ棒と、首にかける棒の固定具がわずらわしいと思います。
そして空気清浄機のタンクは意外に大きく、ショルダーバッグのようにストラップをつけて肩からぶら下げなければなりません。
コストダウンは急務では?
そしてアクティブマスクの価格は125,000円もします。
N95マスクという、厚生労働省が医療機関での使用を推奨しているコロナ対策マスクがあるのですが、この値段は20枚で3,960円です(*3-2、3-3、3-4)。
125,000円ならN95マスクを630枚購入することができ、1日1枚使っても2年近く使えます。
しかも厚生労働省は、必要な場合は、医療機関であってもN95マスクを再利用してもよいとしているので、さらにコスト安になります(*3-2)。
アクティブマスクが普及するには、コンパクト化に加えて、コストダウンも必要になるような気がします。
もちろんN95マスクをしたうえにアクティブマスクを装着すれば、鬼に金棒になるわけですが。
*3-1:https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/collaborations/2020_08_06_01.html
*3-2:https://www.mhlw.go.jp/content/000621007.pdf
*3-3:https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/cic/attach/briefing_h26-mat08.pdf
*3-4:https://www.askul.co.jp/p/1723563/?rtMode=affiliate&SAStruts.method=run&sc_e=cp_a_as_vc_ps_a_p_kakaku
ユーモアでギスギス感をなくす「マスクNGです」カード
もしエレベーターに乗っているときに、マスクを着けていない人が乗り込んできたら「マナーがなっていない」と感じませんか。
マスクをしていない人に「非常識ですよ」と言ってしまう人もいるかもしれません。
しかし、さまざまな理由でマスクを着けられない人がいます。
例えば、感覚過敏の人、発達障害の方、皮膚の病気や呼吸器の病気を発症している方などです(*4-1)。
そのような事情を知らずに「マスクを着けなさい」と注意してしまうと、トラブルになりかねません。
この、マスクNG問題を解決するツールを中学生が考案しました。
「マスクやフェイスシールドをつけられない人のための意思表示カード」といい、図案は以下のようになっています。

ワケあってマスクがつけられません
この図案は無料で公開されていて、以下のURLからダウンロードできます。
https://kabin.life/archives/1633
カードの大きさは名刺大で、ネームホルダーに入れて首からぶら下げることを想定しています。
作者は、中学生の加藤路瑛さんです(2020年5月時点)。
ユーモラスなイラストとやわらかフォント(文字のデザイン)が効果的で、ギスギスした感じを消し去ります。
自治体もカードを使ったマスクNG意思表示運動を進めていて、例えば福井県の図案はこのようになっています。
こちらも以下のURLからダウンロードできるので、誰でも印刷して使うことができます。
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kenkou/corona/mask_hairyo.html
*4-1:https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kenkou/corona/mask_hairyo.html
フェイスシールドは確かに遊べる
コロナ禍の当初から、マスクを彩るファッションが広まりましたが、マスクより広い面積を持つフェイスシールドはより一層遊ぶことができます。
フェイスシールドは顔全体を覆っていて、視界を確保できればよいので、目さえふさがなければいくらでもデザインできます。
そうです、フェイスシールドはお面になるんです。
「おもしろフェイスシールド」でネット検索すると、デーモン・タイプやキャラクター・タイプ、歌舞伎タイプなどが出てきます。
宇宙服みたいで格好いい
なかでも異彩を放っているのは、宇宙服のようなフェイスシールドです。フェイスというより、上半身シールドといったほうがよいかもしれません。
宇宙服タイプの上半身シールド「BioVYZR」を開発したのは、カナダのVyzrテクノロジーズという会社で、クラウドファンディングで開発費約3,400万円を集めました(*5-1)。
BioVYZRは底がない筒状になっていて、腕を出す穴がついています。胸から上をすっぽり覆いますが、透明のプラスチックのシールド部分が大きいので、広い視界を確保しています。
コロナなどのウイルスをシャットアウトするフィルターがついた電動ファンが搭載されているので、なかにキレイな空気が送り込まれます。
それでいて、総重量はバッテリーを含めて1.4kgと軽量。1着約2万~3万円と決して高いとはいえません。
それに加えて、この製品には格好よさという魅力があります。
コロナ対策製品なので性能が第1なのですが、開発費を集めるには、お金を出す人に「お金を出したい」と思わせる必要があり、それには格好よさが重要になります。
おもしろさや格好よさといったポジティブな感情は、「コロナ対策をしなければならない」というネガティブな気持ちを減らしてくれます。
フェイスシールドを着けなさい、と命じられると面倒な気持ちになりますが、おもしろさを競うのであれば苦になりません。
*5-1:https://www.businessinsider.jp/post-214466
まとめ~傘も珍品だった
ロンドンは雨が多い土地なのに、200年前まで、男性が傘をさすことは滑稽な行為でした。紳士たるもの、雨は帽子とトレンチコートでしのがなくてはならない、という考え方があったからです。
ジョナス・ハンウェイ(1712~1786年)という人が、イギリスで初めて男性として傘をさしたとき、周囲から笑われました(*6-1)。
傘も珍品だったのです。
珍品が必需品に格上げされることは珍しいことではありません。
コロナ対策製品として生み出された新商品のなかにも、コロナが収束しても生き残り、便利グッズとして重宝されるものがあるかもしれません。
*6-1:https://www.otenki.jp/sp/art/column/?pg=1&cl=1&ds=1