「実は中国製は高品質」という認識が広がっている

「実は中国製は高品質」という認識が広がっている

日本の政府系研究機関、国立研究開発法人科学技術振興機構は、中国製のカーナビについて次のように報じています(*1)。

●中国製のカーナビ、品質合格率は30%未満
中国の電子科技集団公司第54研究所認証センターは、最新のGPSカーナビ製品の品質検査したところ、合格率は30%に満たなかったと公表した。
1)測位精度が低い、2)目的地が見つからない、3)カーナビどおりに運転すると遠回りする、といった問題が存在する。

この報道を聞いて「やっぱり中国製品は」と思うでしょうか。
しかしこの報道は、2012年のものです。
それから10年近くが経過して、中国製品はまったくの別物になったといっても過言ではありません。

もし、2021年の今も「中国製品は安いけど粗悪」と思い続けていると、いろいろと支障が出るでしょう。なぜなら、一部の中国製品の品質は、日本製品より高くなっているからです。
「いくらなんでも日本製を超えるわけがない」と思った人にこそ、この記事を読んでください。

*1:https://spc.jst.go.jp/news/120204/topic_5_01.html

なぜ「中国製品は粗悪」と誤解していると支障が起きるのか

なぜ「中国製品は粗悪」と誤解していると支障が起きるのか
日本人は、中国製品について正しい認識を持っておいたほうがよいでしょう。よい中国製品を使うことで、生活の質が向上したり、ビジネスがうまく回ったりするからです。
中国製品を誤解していると支障が出るでしょう。

消費者に生じる支障

日本の消費者が、中国製品は駄目なものばかりと思っていると、優れた中国製品を購入する機会を失うことになります。そうなると、性能が低いのに価格が高い日本製品を好んで買うことになり、それは生活の質を落とし、家計にダメージを与えます。
すぐに壊れてもよいものは安い中国製品で済ませて、重要で高額な商品は日本製を買う、という購買行動は見直す時期に入っています。

ビジネスパーソンに生じる支障

ビジネスパーソンが、「中国製品は品質に劣るから、重要製品は日本の工場でつくる」と考えていると、売上も利益も上がらないかもしれません。
なぜなら、優れた中国製品が、相変わらず安価で日本の市場に出回っているからです。

日本工場にこだわったばかりに、コスト高になって販売価格が高くなると、目が効く消費者から敬遠されてしまうかもしれません。
中国工場に「日本製品に負けないものをつくってほしい」と依頼すれば、安くてよいものをつくることができるかもしれません(*2)。
よいものなら売れるので、売上高は伸びます。安ければ利益率が高くなるので、利益も増えます。

*2:https://mitsudenshi.co.jp/3317/

中国製品の品質

中国製品の品質
世界のどの工業国の製品と同じように、中国製品にも、高品質のものと低品質のものがあります。
ここではあえて、高品質の中国製品にフォーカスしてみます。
トップクラスの製品の品質を知れば、中国製品への偏見は吹き飛ぶはずです。

中国製スマホの実力

世界のスマートフォン出荷台数の、2019年のメーカー別シェアは以下のとおりです(*3)。

1位:サムスン(韓国)21.6%
2位:ファーウェイ(中国)17.6%
3位:アップル(アメリカ)13.9%
4位:シャオミ(中国)9.2%
5位:オッポ(中国)8.3%

アップルのiPhoneは台湾と中国、インドでつくっているので、米国産とはいえないでしょう(*4、5)。
このことを加味すると、世界のスマホ地図は次のようになります。

●中国のトップメーカー:大体半分
●韓国のトップメーカー:約2割
●その他メーカー:約3割

スマホは今や、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要ツールになっています。DXとは、デジタル技術で社会変革を起こす取り組みで、日本政府も重視しています。
例えば、買い物も、キャッシュレスも、家中の家電を動かすのも、自動車のロックも、娯楽も、スマホ1台でこなすことができます。
つまり中国は、DXのカギを握る機器で世界の半分のシェアを取っていることになります。

*3:https://www.bcnretail.com/market/detail/20200131_156261.html
*4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61875150S0A720C2FFJ000/
*5:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53584480Z11C19A2FFE000/

すべての中国の女性が、日本の化粧品を憧れているわけではない

中国の女性は日本製の化粧品に憧れを持っている、と思っている日本人は多いと思います。実際、新型コロナウイルス感染拡大前は、多くの中国人が日本にやってきて、日本製の化粧品を大量に買い占めていました。

ただ、中国経済に詳しいジャーナリスト、中島恵氏は「中国では、日本製品は高品質で安全安心、中国製品は粗悪品という消費者意識は、若者を中心に変わってきている」と指摘しています(*6)。
中国国内のショッピングセンターの化粧品売り場では、かつて日本製や欧米製の化粧品を使っていた中国人女性が、こぞって中国製化粧品を購入しています。それは、日本製品より安く「品質やセンスが断然よい」からです(*6)。

中国のネット通販大手アリババの研究機関が2020年に中国国内で消費者調査を行ったところ、中国人がネット通販で購入した商品の8割は中国製で、8割の中国人消費者が「中国ブランドを支持する」と回答しました(*6)。

*6:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79624?imp=0

ドローンの7割は中国製

産業にも趣味にも、そして軍事にも利用されるドローンの世界シェア1位は、中国のDJIという企業です。世界で飛び交っているドローンの7割がDJI製ということです(*7、8)。
DJIは日本にもDJIジャパン株式会社(本社・東京都港区)という法人を持っています。

ドローンは、建築現場の撮影や警察の捜索、災害被災地での調査などに使われるので、落ちるわけにはいきません。世界中の過酷な現場が、落ちないドローン、正確に飛ぶドローン、さまざまな機能を搭載したドローンを求めていて、そのニーズの7割を、中国企業1社が一手に引き受けています。

ドローンに使われるモーターや制御機器、撮影機器、軽量化技術、精密部品は、日本メーカーが得意とする製品であり、日本にもドローンメーカーはあります。
しかし、日本の現場ですら、飛んでいるドローンの多くはDJI製です(*9)。

*7:https://www.dji.com/jp/company?site=brandsite&from=footer
*8:https://bit.ly/3eRQa0L
*9:https://bit.ly/3tRlMYN

自動車ですら電気なら中国が最多

電気自動車でも、中国勢が目覚ましい活躍をみせています。
2019年のメーカー別の電気自動車販売台数のトップ10は以下のとおりです(*10)。
ここでいう電気自動車とは、EV(純粋の電気自動車)とPHV(充電できるハイブリッド車)を合わせたものです。

1位:テスラ(アメリカ)367,820台
2位:BYD(中国)229,506台
3位:BAIC(中国)160,251台
4位:SAIC(中国)137,666台
5位:BMW(ドイツ)128,883台
6位:フォルクスワーゲン(ドイツ)84,199台
7位:日産(日本)80,545台
8位:Geely(中国)75,869台
9位:ヒュンダイ(韓国)72,959台
10位:トヨタ(日本)55,155台

トップ10のうち実に4社が中国メーカーです。
世界1多く自動車をつくっているトヨタは、電気自動車になると10位に沈んでいます。
世界最大の自動車市場を持つ中国は、2035年までにすべての新車を電気自動車にする方針を示しています(*11、12)。
世界2位の自動車市場を持つアメリカでも、GMが2035年までにガソリン車の新車販売をやめて、電気自動車に切り替えるとしています(*13)。アメリカのバイデン大統領は「政府が所有する車を電気自動車に変える」と表明しています(*14)。
電気自動車時代が到来したら、中国メーカーが席巻するかもしれません。それどころか、中国メーカーが電気自動車時代を築きあげるのかもしれません。

*10:https://www.hyogo-mitsubishi.com/news/data20200229090000.html
*11:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/f2067f867d465ba0/20200011.pdf
*12:https://www.aba-j.or.jp/info/industry/13893/
*13:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210129/k10012838691000.html
*14:https://www.nikkei.com/article/DGXZZO64409650Q0A930C2000000/

「だから品質が高いのか」と納得できるエビデンス

優れた中国製品を手にすれば、すぐに品質の高さを実感することができます。しかし、中国製品の品質を疑っている人は、1個や2個の良質な中国製品を手にしても「まぐれ」と思うかもしれません。
よい中国製品と出会えることはまぐれではない、といえる証拠があります。
それは中国の科学技術の高さです。

エビデンスその1、宇宙開発

中国の無人探査機「嫦娥(じょうが)5号」が2020年12月に、月面に着陸しました。そのとき、中国の国旗を立て、これはアメリカに次ぐ快挙です。
ただ、この報道はそれほど大々的なものではありませんでした(*15)。なぜなら、中国の月面着陸は、2013年と2019年に続く3回目だからです。
中国の宇宙科学は、月に行くレベルを超えて、月で何かをするレベルに達しています。
2020年の嫦娥5号は、月面の岩石と土壌を採取しました。

各国政府は今、宇宙開発を実利のために取り組んでいます。
日本政府は、宇宙開発は、国民生活の質と経済競争力と科学技術力の3つを向上させるために行なっている、としています(*16、17)。
この3つを成し遂げることができるのは、宇宙開発を遂行するには高い技術力が必要になるからです。

宇宙開発で成果を挙げれば、そのとき使った技術を民間に移転できます(*16)。民間に高い技術力がおりてくれば、それによって製品の質が向上して経済競争力が強まり、それが生む大きな利益が国民生活の質を高める、というわけです。
宇宙開発で好成績を残している中国の製品の質が向上していても、まったく不思議はないわけです(*18)。

*15:https://www.bbc.com/japanese/55183631
*16:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/uchuu/reports/03090101/003.htm
*17:https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/cosmo/haihu08/sankou8-2.pdf
*18:https://jp.reuters.com/article/idJP00093300_20210107_00220210107

エビデンスその2、科学論文世界1位

中国製品の質の高さを裏づけるエビデンスその2は、科学論文の本数、世界1という実績です。
日本の文部科学省が世界各国の科学論文の数を調べたところ、2016~2018年の平均は次のとおりでした(*19)。

1位:中国、305,927本、シェア19.9%
2位:アメリカ、281,487本、シェア18.3%
3位:ドイツ、67,041本、シェア4.4%
4位:日本、64,874本、シェア4.2%
5位:イギリス:62,443本、シェア4.1%

論文とは、研究者や開発者が、世界で誰も知らなかったことをみつけたときに、発表用に書く文章です。そして世界的な「論文」と呼ばれるには、認定機関によって研究や実験の価値が認められなければなりません。
科学論文の数は、その国の科学技術力の重要な指標になります。
世界1位になっているかもしれない科学技術でつくられた中国製品が、悪いものであるはずがないといえます。

*19:https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00809/

エビデンスその3、大量の人とお金を投じている

中国製品の質が高くても不思議でないのは、優秀な人材を大量に研究開発分野に投じて、大きな投資を行なっているからです。
国別の研究者数と研究開発費のトップ5は以下のとおりです(*19)。

<国別の研究者数>
1位:中国、187万人
2位:アメリカ、143万人
3位:日本、68万人
4位:ドイツ、43万人
5位:韓国、41万人

<国別の研究開発費>
1位:アメリカ、61兆円
2位:中国、58兆円
3位:日本、18兆円
4位:ドイツ、15兆円
5位:韓国、10兆円

中国のすごさがわかると同時に、日本の3位は「4位に近い3位」であることがわかります。
科学論文でも、研究者数でも、研究開発費でも、日本と中国は格が違います。

優良環境大国になる可能性を秘めている中国

もし中国の技術力の高さと経済力の強さを「大金をかけて環境に負荷をかけて成長しているのだから、当然の結果だ」と思っていたら、それも半分間違っています。

確かに中国は地球を汚している

CO2を多く排出するほど地球を汚す、と考えられています。
石炭火力発電の、発電燃料燃焼によるCO2排出量は、1kWh当たり864gになります(*20)。
石油火力発電は695g、LNG火力発電は476gですので、石炭火力発電の環境への負荷の大きさがわかります。
そして太陽光発電、風力発電、原子力発電は、発電燃料燃焼によるCO2排出量はゼロです。

中国の電力の73%は石炭火力発電によるもので、日本の34%、アメリカの40%と比べると、かなり激しく地球を汚していることがわかります。
しかし、視点を未来に移すと、まったく違った光景がみえてきます。

*20:https://www.ene100.jp/zumen/2-1-9

中国は緑、日本は黒

中国は緑、日本は黒
2021年3月1日づけの日本経済新聞に「緑の世界と黒い日本」という、おどろおどろしい見出しがおどりました(*21)。
記事は、調査会社のブルームバーグNEFが、「発電所を新設した場合、どの電源が一番安いか」を国・地域ごとに調べた結果を報じています。

1,000kWhの電気をつくるコストは、日本では石炭火力発電が最も安く74ドルでした。
日本で太陽光発電を新設しようとすると124ドルかかり、風力発電は113ドルかかります。
つまり現状の日本の電力技術や電力制度では、安い太陽光発電や安い風力発電がつくれないということです。

ブルームバーグNEFは、石炭火力発電の新設コストが最も安い国・地域を、黒く塗りました。日本は真っ黒に塗られました。
そして再生可能エネルギー発電の新設コストが最も安い国・地域を、緑で塗りました。
中国は緑で、温暖化対策の枠組みであるパリ協定を離脱しようとしたアメリカすら緑でした。
中国の最安発電は太陽光発電の33ドルで、アメリカは風力発電の36ドルだったからです。

中国の太陽光発電の安さが際立ちます。
中国は、確かに今は、地球を汚しながら経済発展していると批判されていますが、将来は、地球を守りながら経済発展している国と呼ばれるかもしれません。

*21:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR17EWR0X10C21A2000000/?unlock=1

まとめ~新事実を加えよう

中国製品についてよいイメージを持っていない人は、これまで何度も「買ったその日に壊れた」経験をしたからではないでしょうか。
中国製品に対して、悪感情を持っている人もいるでしょう。日本製品を違法コピーした中国製品は、ほぼ無数出回っています。
さらに、日本製品の品質が世界1であると信じている人も、中国製品はそれよりはるかに劣ると考えがちです。
これらはすべて事実です。
しかし、これらの事実だけで中国製品を語ることができる時期は終わりました。
中国製品には、日本製品だけでなくアメリカ製品やドイツ製品よりも優れたものがたくさんあり、これが新事実になっています。

よい製品は生活を豊かにします。そして、よいうえに安い製品は、生活を豊かにしながら家計にダメージを与えません。
コスト安に生活を豊かにする製品は、かつて日本が世界に供給していましたが、今は中国がその役割の大半を担っています。
優れた中国製品が多数存在する、という新事実を認めることで、生活はさらに快適になり、経済もよくなるはずです。
中国製品と上手に付き合いたいものです。

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